歌帳

日々の思いを歌にこめて

寒き朝

今日の短歌 張りついてくる寒き朝の気穂の抜けしすすきの群れをまるごと包む

曖昧

おんぼろの思いをつづる暇もなくただ生きている春の一日を MSE.W 横罫ノート クラシック 厚紙 日記,192ページ,横14.5cm×縦21cm,内ポケット しおり紐 ゴムバンド(ブルー) MSE.W Amazon

北千住

東京を出るときいつもこの駅にまつわることをにわかに思う

秋の急ぎ足

長すぎた夏の分だけ急ぎ足秋はそんなに走らなくていい 秋よ急ぐな

夕暮れ

公園の向こうの端から迫り来る夜に取り込められようとする

雪ならば雪が隠せることもありその間に育つ夢の芽もあり 雪は豊年の予兆と考えた歴史は長い。科学的見地からしてもまんざら誤りとは言えぬらしい。家持の歌を引くまでもなく、雪は特別な思いを抱かせる。

金よりも

金よりも大切なものばかりだが金が大事と言わねばならぬ 本当は金よりも大切なものはいくらでもある。金がなくても得られる幸せは確かにある。だが、富の集中がもたらす格差を見せつけられると、ついやはり金が大事だと言ってしまうのだ。金が無いことを恨み…

再出発します

殆どを使い果たしたあとだから私は何かを言いたくなるの

名月の後

十六夜も立ち待ち月も過ごしても続く暑さの彼岸になりぬ

大雨

大雨が削る何かを痛みとし運ぶ何かをかすかに願う

走り梅雨

何ものと知らぬかたちの目の前に立ち塞がれど払うすべなく

郊外路線

どこまでも続く住まいの壁と屋根通勤電車は駆け抜けていく

海岸の景

砂浜の続く浜辺の向こうには常波洗う岩礁浮かぶ

紅葉迷彩

どこからか描けばよいのか坂道の向こうに広がる迷彩紅葉

穂すすき

何回も塗り直された風景画デッサンの後すすきの穂波

鱗雲

待てど来ぬ下り電車見上げれば秋も半ばの鱗雲かな

大物

大物が釣れたと喜ぶ表情にいくらでもあるその裏話

梅雨末期

流れ込む熱気の筋は山削り川走りゆく繰り返しゆく

現在地

自らの居場所がいかなる沼沢か知らぬ子孫の哀れ人生

マスク

新しいウイルス防ぐマスクなどないとは知るもなければ惑う

トリコロール

いつまでも回り続けるトリコロール何かを変えるためのスクリュー

形にならないもの

作っては壊し続ける生業を無駄と言わずに芸術と呼ぶ

憎しみ

憎しみのその根本を尋ねると自分に似ている何かが渦巻く

船の路

繰り返す喜怒哀楽の波の上漕ぎゆく船の路の遥かに

アジテーション

武器を取れ社会に決して負けるなと言った論者の早世悼む

すみか

いつからか丘から見えぬ人たちと話せるような夢をみている 森の中すみかはおそらくまだ暗く里の騒ぎは届いていない

空の高さ

涼風の身体に浸みる朝となり旅の途中の空の高さよ

同じ舞台に

誰もかも同じ舞台に立つ役者幕が上がれば演じなければ

眺望

古も現在の暮らしも高みから見れば愛しいちさき点景

蓮の花

蓮花の咲く池端の静かさを求めてここにこの夏も来た 問うほどに沈黙の色漂わせ薄紅に蓮の花咲く