歌帳

日々の思いを歌にこめて

虫の音

どこまでも虫の音響き澄んでいく心に映る古の町

  秋の夜、響き渡る虫の音を聞いているとふと昔のことが思い出されることがある。おそらくその時にも同じような虫の音が聞こえていたはずだ。同じ音を聞いていても感じるものが少しずつ変わり今に至っている。いやおそらく虫自体も何らかの生物上の変化を繰り返してその時はほんの少し変わっているのかもしれない。彼らの命は短く、その変化が世代を通して行われるが、私はそれより少し長い命の中で昔澄んでいた町で聞いた彼らの先輩の鳴き声を思い出したのである。