自らの衰え決して認めない私は老いることも忘れる
懸命に働いた後夏風邪の仕打ち加わる、受けて立とう!
反対の電車に乗っている人のなぜか気になる視線の先が
もつれたらもつれたままのあり方を大切にする生き方もある
往年のスターの歌う青春を挙げる拳で取り戻しゆく
あの夜に忘れた傘に貼りついた木の葉と君が忘れられない
南東に火星は赤く輝いて我が日常を揺さぶろうとするおそらくは吉凶何れも先触れて赤い惑星最接近の夜我がために光るにあらずただ物質の振る舞いとは知る今更に天動説を信じたくなるほど不安な夜星赤く
変わりゆく夕景今日の一日が意味を持つまで見つめていたい
形なき思いの満ちた肉体を満員電車にねじ込んでいく
どこからか引っ張られてでもいるような頭痛が襲う低気圧来る
梅の花咲いた坂道下がりつつ明日のことはいま考えず
少女らが回り続ける円形の噴水池の水は動かず
雪降って潤い戻る朝の町電車は速度上がらないまま
何万年後の乾いた空の下我が同族の涙は何色
生地厚のコートの重さ感じつつ確かめている今日の自分を
とりあえず丸めて畳んで目につかぬ場所に隠そう年末だからできたことよりもはるかに終わらないことの多さは言うまでもなく捨てなさい忘れなさいという声を悪魔の声として聞いているガラクタを積み上げたものそれこそが己の性と言うべきものよ
一本の電車を敢えて乗り過ごし次の世界に賭けてみようか
燃え尽きたはずの心の残りかす燻っている確かに奥で
坂道を駆け下りていく自転車のブレーキの音空に秋雲
秋空に投げ出してみるなけなしの私の抱えるあれやこれやを
何もかも忘れてしまえと思いつつ繰り返し見る灰色の空
暮れていく港の空に一日のまた人生の名残漂う
気がつけば同じ風景見続けて今日まで生きたこれからもまた 次の手もその次の手も知り抜いているから無口になることもある よく見せる仕草は僕を真似たものそれとも君を真似たのは僕 緊張をすると思わず口に出す条件反射のように君の名
斜め上向く君は少し目を大きく開くその時が好き
ちょとした思い込みから掛け違い歩調も話も合わなくなるの
結ぶ手を固くしようと力いれ思いを込めればなおこぼれゆく
雑踏の中からあがる怒声には崩れる前の予兆の気配
とりどりの幟はためく国技館それに憧れている若力士整っている顔あり幼顔もあり関取となる顔はどの顔
山茶花の生垣刻みゆく我は確かに町の景の一つに
クレマチス広げる花びら伸びやかに忘れかけてたあの日に誘う